憲法改正とは何か 手続きの流れと国民投票の仕組みをわかりやすく解説

2025-05-13 22:27

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国の形を定める最高法規

私たちの社会のあり方や、国と私たち国民の関係、そして国がどのように動くべきか——その根本的なルールを定めているのが「憲法」です。憲法は国の最高法規であり、他のどの法律や命令よりも強い力を持っています。私たちが日々の生活を送る上で直接意識することは少ないかもしれませんが、私たちの権利や自由が守られているのも、国の機関が勝手な行動をとらないように定められているのも、すべて憲法に基づいています。

しかし、社会は常に変化しています。新しい技術が生まれ、国際情勢が変わり、人々の価値観も少しずつ移り変わっていきます。そうした時代の変化や新たな課題に対応するため、あるいは憲法が制定された当時には想定されていなかった事態に対応するために、憲法の内容を見直す必要性が議論されることがあります。これが「憲法改正」です。

日本の憲法は、容易には改正できないように厳格な手続きが定められています。これを「硬性憲法」と呼びます。これは、時の政府や一部の人たちの都合によって安易に国の根本原則が変えられてしまわないようにするための、大切な仕組みと言えます。では、具体的に憲法を改正するためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。

改正に向けた第一歩:国会での発議

憲法改正の議論が具体的に進む最初のステップは、国会にあります。まず、改正案の原案が国会議員によって提出され、衆議院と参議院それぞれで慎重に審査されます。憲法の改正案は、私たちが日頃目にする一般的な法律案とは異なり、より重い手続きが求められます。

具体的には、衆議院と参議院それぞれにおいて、その議院の「総議員」の3分の2以上の賛成が必要です。ここで重要なのは、「出席議員」の数ではなく「総議員」の数で判断されるという点です。例えば、衆議院の定数が465名であれば、欠席者がいたとしても、3分の2にあたる310名以上の賛成が必要になります。参議院も同様に、定数248名であれば、166名以上の賛成が必要となります。これは、与党だけでなく幅広い政党の合意がなければ改正案を国会から出すことすら難しい、ということを意味しており、改正のハードルの高さを物語っています。

衆議院と参議院の両方でこの厳しい3分の2以上の賛成を得て、はじめて憲法改正案は国会から国民へと提示されます。この、国会が改正案を国民に示す行為を「発議」と呼びます。国会での発議は、あくまで改正に向けた最初の段階であり、これだけでは憲法は改正されません。最終的な判断は、私たち国民に委ねられているからです。

最終判断は国民の手で:国民投票の仕組み

国会で憲法改正の発議がなされると、次に「国民投票」が行われます。これは、憲法改正という国のあり方に関わる最も重要な決定について、主権者である国民一人ひとりが直接意思表示を行う機会です。国民投票は、国会での発議から原則として60日以後180日以内に行われることになっています。

国民投票に関するルールは、「日本国憲法の改正手続に関する法律」、通称「国民投票法」によって細かく定められています。投票ができるのは、私たち日本国民で、満18歳以上の人です。選挙権年齢と同じですね。投票は、選挙と同じように、お住まいの地域の投票所で行われます。投票日当日に都合がつかない人のために、期日前投票や在外投票の制度も用意されています。

国民投票では、示された憲法改正案に対して「賛成」か「反対」かを投票用紙に記入します。そして、この国民投票において、有効投票総数の過半数の賛成が得られれば、憲法改正案は正式に承認されたことになります。単に投票数の多い方、ではなく、必ず「過半数の賛成」が必要とされる点も、憲法改正の重みを示しています。もし過半数の賛成が得られなかった場合は、改正案は否決され、憲法は改正されません。

国民投票に際しては、改正案の内容や賛否に関する情報提供や、賛成・反対それぞれの立場からの運動が活発に行われます。国民投票法では、テレビやラジオでのCM放送に関するルールや、公務員の運動に関する制限など、国民が冷静かつ正確な情報に基づいて判断できるよう、いくつかの定めが置かれています。こうした情報に触れ、自分自身でよく考え、判断することが、私たち国民にとって非常に大切になります。

改正の成立と公布

国民投票で改正案が承認されると、いよいよ憲法改正が成立します。国民投票の結果を受けて、内閣総理大臣がただちに改正のあった旨を公示し、天皇陛下が憲法改正を公布することになっています。公布されてはじめて、改正された新しい憲法の条項が法的な効力を持つことになります。

憲法改正は、このように国会での厳しい発議要件と、国民投票での過半数による承認という二重のハードルを越えなければ実現しない、極めて厳格な手続きが定められています。これは、国の根本規範である憲法が、一部の意見に左右されることなく、国民全体の広い合意に基づいてのみ変更されるべきである、という考え方に基づいています。

憲法改正は、国の未来や私たちの暮らしに大きな影響を与える可能性のある重要な出来事です。だからこそ、その手続きは慎重に定められており、私たち国民一人ひとりが関心を持ち、内容を理解し、自らの意思を表明することが求められているのです。